5G(第5世代移動通信システム)の技術を使い、企業が独自の携帯電話ネットワークを構築する手法として「ローカル5G」がある。2019年12月に制度化され期待が高かったものの、導入はそれほど広がっていない。基地局や交換機などの費用が高く、依然としてPoC(概念実証)の域にとどまっている。
これとは別に4Gの技術を使う「プライベートLTE」もある。現状は地味な存在となっているが、その1方式である「sXGP(shared eXtended Global Platform)」は2023年秋ごろに使用できる帯域が拡大する。当面は課題の多いローカル5Gより、sXGPのほうが先に導入が広がりそうである。
専用プロファイルを米アップルと開発
sXGPが2017年10月に制度化された当初は使用できる帯域が狭かったうえ、同じ周波数帯を自営PHS方式やDECT方式(欧州で標準化されたコードレス電話規格)と共用するので必ずしも使い勝手がよくなかった。公衆PHSサービスが2023年3月に終了したことを受けて制度の見直しを予定しており、今後は10メガヘルツ幅システム(現在は5メガヘルツ幅)を使えるようになる。しかも自営PHS方式やDECT方式と共用せず、sXGP専用で使える帯域を新たに設ける。
もっとも、使用帯域が10メガヘルツ幅に拡大したところで通信速度は下りで最大毎秒28メガビット、上りで同8メガビット程度。通信速度の低さにがく然とするかもしれないが、免許不要で手軽にプライベートネットワークを構築できるメリットがある。
例えば鉄道会社。事故や災害などで電車が止まった際は乗客が一斉に携帯電話で通話や通信を始めるため、駅員同士の連絡に支障をきたす恐れがある。通信速度が遅くてもプライベートネットワークで確実に通話できる手段としての需要は多い。自治体の防災用ネットワークでも採用されている。事故や災害に限らず、多くの人が集まるスタジアムなどでも携帯電話網の混雑の影響を避ける目的で導入しているケースがあるという。
多くのベンダーがsXGPのソリューションを手掛ける中、携帯大手で並々ならぬ力を注ぐのがソフトバンクだ。2023年4月には子会社のビー・ビー・バックボーンが展開するsXGPサービスでiPhoneやiPadが利用可能になったと発表した。